木造戸建て住宅の解体工事は、どのような流れで進んでいくのでしょうか。
解体工事をまず思い立ったら、業者選びから始まり、工事が実際にスタートするまでは施主もやるべきことが詰まっています。
時間と心に余裕をもって工事を進められるように、まず木造戸建て住宅の解体工事について、全体の流れを把握しておきましょう。
木造戸建て解体工事の全体的な流れ
日本の戸建て住宅は、ほとんどが木造です。そのため、一般的な解体工事の流れと木造住宅の解体工事の流れは、ほぼ同様と考えてよいでしょう。
建物本体の解体作業の部分のみ、木造ならではの「手壊し」という工法が特徴的となっています。それを踏まえて、全体的な流れを追っていってみましょう。
業者を探す~契約
最初に解体工事を依頼する業者を探し、契約することから始まります。
希望通りの解体業者を探す
住宅の解体工事を考えてまず初めにすることは、工事を依頼する解体専門業者を選ぶことです。とにかくどんどん、自分の希望にあった業者を挙げていきましょう。現場から近いところ、費用が予算に見合いそうなところ、業者の雰囲気がよさそうなところ、ホームページがわかりやすいところ…ここで絞り込む必要はないので、複数社選んでいきます。
複数社というのがポイントです。いくつもの候補を挙げて、比較しながら良いところを絞り込んでいき、最終的に一社決めればいいので、この段階では何社ピックアップしてもかまいません。
見積の依頼をする
複数社候補を挙げたら、それぞれの業者に見積を依頼します。このときも、きちんと現地まで来て事前調査をしてくれたうえでの見積をしてくれるかどうかを見てみてください。口頭で状況を聞くだけで大体の金額を出すような業者には、依頼を控えましょう。
現地調査
前述したように、きちんとした優良会社であれば見積を出すために現地まで調査に来てくれるはずです。建物の構造・状態や立地・周辺環境はもちろん、重機の搬入経路などまで調査してくれて、項目ごとに正確な見積を出してくれるでしょう。
施主と顔を合わせて、工事内容の希望や前もってチェックしておくべき事項の確認、整地後どのように土地を活用するかの希望などまで、しっかりヒアリングしてもらえれば完璧です。
見積確認
複数社の見積をすべて比較検討し、最終的に工事を依頼する業者を決定します。
ただしこのとき、「もっとも安い業者」に決めるのは得策ではありません。見積を出してもらうのは、どれだけ費用を安くしてもらえるかを確認するためではないからです。
何にどれだけ費用がかかるかという妥当性や正確さを見て、総合的に判断して業者を決めなければいけません。
安すぎる見積を出してくるのには、理由があります。
契約を取ることを優先して、のちのち高額な追加請求をしてきたり、安全を犠牲にして無理なコストダウンをはかったり、廃棄物の不法投棄をして経費を浮かせたり。
「安全・安心」がもっとも優先されるべきである解体工事においては、これ以上下げてはいけないというぎりぎりの予算ラインが存在し、それを超えるような値下げに応じるような業者を単純に「安いから」という理由だけで安易に信じてはいけないのです。
なぜこんなに安いのか、説明を求めてみて、納得のいく返答が得られないようなら、その業者は選ばないほうがよいでしょう。
見積書の内容も重要です。ざっくりとしすぎていて何にどのくらいの費用がかかるのか内訳がよくわからないような見積書では不安です。ひとつひとつ丁寧に、わかりやすく金額を出してくれている業者のほうが信用できると感じられますよね。
また、現地調査や見積は、業者の担当者と顔を合わせる機会にもなります。対応や人柄もよく見極めて、決定要素のひとつにしたいですね。
業者決定・契約
総合的に判断し、最終的に依頼する解体業者を決めたら、晴れて契約となります。
このとき、不明な点や細かい点は口頭でやり取りするのではなく、必ず契約書を作って書面で約束事を交わすようにしましょう。のちのちのトラブルを回避できます。
契約後、工事まで
契約成立後、いざ工事が始まる前にも、施主としてやるべきことは意外にたくさんあります。ひとつずつ漏れのないように進めていきましょう。
近隣挨拶まわり
まずは近隣挨拶です。施主・解体業者の担当者の両者でまわりましょう。
解体工事には、危険や周囲への迷惑要素が盛りだくさんです。近隣住民はただでさえ不安を抱えて工事中を過ごすことになるので、きちんと工事のスケジュールや内容を説明し、挨拶をしておくことでのちのちのトラブル防止にもつながるのです。
留守がちなお宅のために、口頭での挨拶だけでなく書面によるお知らせも用意しておくとよいでしょう。
引越し準備・インフラ停止
仮住まいへの引越しの用意を進めるとともに、解体する家屋のインフラ停止手続きも行いましょう。電気やガス、インターネットなどの業者に連絡し、指示通りに手続きを行います。
水道に関してだけは、工事中も業者が使用する場合がほとんどであるため、前もって業者に確認を取っておきましょう、
不用品の片づけ
解体する旧家屋の片づけを行います。
今後も必要な家具や家電などは、仮住まいへの引越しで運び出しておきますが、不用品や廃棄物もきちんとすべて撤去しておきます。残置物として建物の中に残しておくと処分料が余計にかかりますので、できるだけ自分たちで処理しておくのがよいでしょう。
解体工事中
業者を決めて契約を交わしてからも、施主としては準備しておくことがたくさんあります。余裕を持ったスケジュールで進めていきたいところですね。
ここまで来たら、いよいよ工事本番です。施主の出番はありませんが、工事の流れは知っておくとよいでしょう。
足場・養生の設置
高所作業のための足場、粉じんの飛散や騒音防止の養生シートを設置します。
瓦の撤去
手作業で瓦を1枚1枚剝がしていきます。木造住宅では、この「手壊し作業」の比重が大きく、重機で大胆に壊していく作業よりも多くなります。
分別しながら丁寧に解体していけますが、その分時間はかかります。
内装材や設備の撤去
こちらも分別が必要な廃材ばかりなので、手壊しで丁寧に行っていきます。
重機で取り壊す
解体工事のイメージが、まさにこの工程でしょう。騒音・振動・粉じんの飛散の恐れがもっともある作業ともいえます。水まきが欠かせません。
基礎の撤去
建物の躯体の解体が終わったら、基礎まで撤去します。
地中埋設物の確認
地面より上の建物がすべてなくなったら、地中に埋まっているものがないかどうかの確認を行います。工事前にわかっているものがあればよいのですが、この段階に来て発覚することもあります。
特に古い井戸や浄化槽なら図面に載っていることもありますが、昔知らぬ間に埋められたコンクリートガラやゴミなどが隠れている場合も考えられます。この際には撤去のための追加費用がかかることも覚えておきましょう。
掃除と整地
解体が終わったら、地面に散らかった細かい木くずやコンクリートガラなどのゴミを掃除して、きれいに整地を行います。
廃棄物の処理
解体で出た廃材は、すべて細かく分別してそれぞれの処分場に運びます。解体の工程の段階で手壊ししながら分別しているため、最後にまとめて分別というわけではないので、工事後は最後の処分のための運搬が残っているぐらいです。
解体工事後
工事としての工程が終了したら、あとは事務手続きがひとつ残っています。
建物滅失登記の申請
「登記していた建物をなくしましたよ」という届出が「建物滅失登記」です。
別途費用を支払うことで土地家屋調査士などに代行してもらうことができますが、施主みずからが法務局に出向いて行うことも可能です。費用の節約になるので、時間の余裕があるならやってみてもよいでしょう。
まとめ
木造戸建て住宅の解体工事は、業者選びがポイントです。良い業者を見極められれば、工事は成功したも同然です。
工事自体では施主の出番はありませんが、要所を押さえて流れを把握しておくことにより、何かトラブルがあっても迅速に対応できるでしょう。